経営分析の目的と役割については、以前のこちらの記事でご紹介しました。
経営分析の最も重要なポイントは、単に事業の数字を単月で計算して算出するだけ、ということではなく、分析の結果導き出された数字から、会社の経営にどう生かしていくか、という点に尽きます。
経営分析の計算・算出したことで満足して、その後の実際の会社経営に活かせなければ分析した意味がありません。
そこで今回は、難しい分析方法はたくさんあるのですが、その中でも最もわかりやすく、手軽に取り入れ確認することができる経営分析の第1歩である「前年対比」についてご紹介します。
前年対比|当期と前期を比べるだけ
前年対比とは、読んで字のごとく、当期と前期の数字を比べるだけです。
毎月貸借対照表と損益計算書(以下、試算表)を作成することで、その月の売上、利益、損失などのタイムリーなデータを得ることができます。しかしその数字は単に当期の実績を示したものでありそれだけでは「経営分析」とは言い難いところがあります。
しかし、その試算表に「前年同月」の数字が合体するだけで、非常に有効な経営分析に様変わりします。
この方法は、法人・個人・事業規模・業種などの要素に関わらず、どんな事業においても簡単に取り入れることができます。
前年対比はかんたんで手軽に有効な結果を得られる経営分析の第1歩です。
※この分析を行うための条件はただ1つ。「継続して2年以上事業を行っている事」です。
前年対比|最初は数字を大まかにとらえる
前年対比の最初のポイントは「大まかに見る」ということです。
大まかに見るとは、前年と比べた時に金額の違いが大きい勘定科目に注目する、という意味です。事業規模やその会社の年商にもよりますが、10万円~100万円単位の間で、その金額差を見ていきましょう。
10万円単位以下の金額の小さい違いはとりあえず置いておき、前年と比べて10万円以上の違い(プラスもマイナスも含めて)が発生している勘定科目にまず注目します。
前年と今年で、同じ時期・同じ勘定科目なのに10万円以上の違いが生まれるということは、そこには何かしらの前年と異なる「特別な事情」があるはずです。
前年対比|差額が発生した原因を分析
上記までの手順で、前年と大きな差額が発生している勘定科目がピックアップできたら、その差額が生まれた原因を分析します。
同じ勘定科目なのに金額に10万円以上の差が生まれるということは、そこには前年と違った事情があるはずです。
単純に、前年よりもその月にかかる費用が多い・少ないということもあるでしょう。また、同じ相手先への経費支払でも前年と支払日が1か月ズレていた、という要因で差額が発生することもあります。
このように、そこには差額が生まれる理由が存在してます。その理由を調べていくプロセスが、まさに「経営分析」なのです。
前年対比|分析結果の活用
差額の分析ができたら、あとはそれを実際の経営にどのように活かしていくかが、経営分析のゴールです。
例えば、前年と比べて「運賃」という勘定科目が10万円以上増加していたとします。その原因を調べてみると、前年と比べて運送会社との間の運賃単価の「値上げ」があったことがわかりました。
そして次に「売上」という勘定科目を見てみます。すると、売上は前年とほぼ変わらない数字でした。
この場合、単に運賃単価が値上げされたことで、会社の経費が増えただけで、売上は増加しておらず、そのために前年よりも利益がその分減ってしまっている、という結果が見えきます。
こうした経営分析結果が見えてくれば、運賃単価の見直しを再度依頼してみる、その他の運送業者を探して見積もりを取って運賃を比較してみる、などといった次のアクションにつながります。
前年対比 ➡ 差額の分析 ➡ 原因の究明 ➡ 経営方針の決定
このプロセスが経営分析の重要なポイントなのです。
ぜひ、このプロセスを参考にあなたの事業内容を「経営分析」し、実務に参考としていただければと思います。
前年対比|便利な会計システム導入で簡単に分析収集
会計システムによっては、毎月の試算表を出力するときに、すでに前年同月の数字が入った状態で出力できるものもあるでしょう。その機能がデフォルトで搭載されているシステムならばぜひ有効に活用しましょう。
もし出力できなければ、別途エクセルなどでご自身で前年対比の残高試算表を作成するという方法もあります。(ただ、エクセルの手入力にはどうしてもヒューマンエラーがつきものですから入力の際には数字の打ち間違いが起きないよう工夫が必要かもしれません)
おすすめの会計システムをいくつかご紹介しておきます。日々の取引をこれらのシステムを利用して入力することで、経営分析に使えるデータが簡単に収集できるでしょう。それだけでなく、帳簿作成自体が効率的に改善する可能性を秘めているとても便利なシステムです。興味があれば下記バナーをクリックして、各会計システムを提供しているメーカーの公式ホームページにて詳細を確認してみて下さい。