今回は「でんさい」について解説していきます。
この記事では
といった内容について、かんたんに解説していきます。
そもそも「でんさい」とは?
数年前からよく耳にするようになった「でんさい」ですが、正式には
【電子記録債権(でんしきろくさいけん)】
と言います。
これを略して「でんさい」と呼ばれています。
「でんさい」とは、電子記録債権という名の通り、金銭債権(手形や売掛金です)を電子的に、つまり
電子データとして記録される債権のことを意味しています。
これまで債権として主流だった「手形」や「売掛金」とは少し違った
新しいタイプの金銭債権が「でんさい」なんです!
取引先から代金を支払ってもらう「権利」(=債権)を
電子データとして管理できる仕組みが
「でんさい」です!
かんたんな取引の流れ
手元に現物が存在している手形や売掛金とは違い、電子データとしての債権ですから、手元には何もありません。その代わり、電子データとして債権がインターネット上に存在しており、そのやり取り(受け渡しなど)もインターネット上で可能となっています。
したがって、取引も基本的にはネット上で全て完結します。
A社(支払先)と B社(受取先)の取引として、
- 支払金額 ~ 100万円
- 支払日 ~ 1/25
- 支払期日 ~ 3/31 の場合
「でんさい」のメリット
一般に、でんさいは「手形」のデメリットを大きく改善したシステムであるといわれています。
具体的にでんさいのメリットを知るために、「手形」による取引方法との比較で確認してみましょう。
手形は、発行するためのコスト(手形用紙代、印紙代 等)がかかる
手形は発行するために、専用用紙がまず必要で、さらに支払金額に応じた印紙代も別途必要です。
➡「でんさい」は電子データのやり取りなので、こういったコストかかりません。
手形を取引先から受け取った後、保管・管理するコストがかかる
手形を受け取ったのち、銀行へ取り立てに出すにしても、別の支払に廻すにしても、一時的に「手形」そのものを金庫などで保管する必要性があります。
「金庫」などに代表される、頑丈で堅牢な保管手段を別途用意しなければなりません。
また、手形が債権としてたくさんたまってきたときに、それぞれの手形の期日・金額チェック・管理が必要です。エクセル等で別途一覧表を作成して管理している事もあるでしょう。
そもそも、そういった別途管理手段が必要です。
こうしたコストがかかり、作業としてもかなり煩雑になります。
➡「でんさい」は電子データのやり取りなので、システム上で全て管理されますので、保管や管理のコストはかかりません。
手形を保管するという事は、紛失や盗難のリスクが生じます
「金庫」で保管するとしても、やはり事務所に置きっぱなしにすると、紛失や盗難のリスクはゼロではありません。仮に代表者が自宅へ持ち帰って保管したとしても同じリスクは伴いますよね。
➡「でんさい」は電子データのやり取りなので、紛失・盗難のリスクがありません。
受取った手形は分割譲渡できません
取引先から「1000万円の手形」を受け取ったとします。
仮に、支払金額がちょうど「500万円」の支払先が2件(500万円×2件=1000万円)あったとしても、
1000万円の手形を分割して500万円の手形2枚、という事は残念ながらできません。
1000万円の手形は、そのまま取り立てに出して現金化するか、もしくは、1000万円以上の支払先へ廻す、という使い方になります。
➡「でんさい」は電子データのやり取りなので、500万円2つに分割して支払いへ廻すことが可能です!
いかがですか?
こうして比べるだけで、でんさいのメリットが大きいのは明らかですよね。
時代的にも、さすがに手形(紙)でやり取りするのは時代遅れ的な感じが否めません。
電子化によってネットで管理するのが当然の流れではないでしょうか。
「でんさい」の管理
でんさいの管理は「電子債権記録機関」が行っています。
現在の主な電子債権記録機関は
- 全国銀行協会100%出資:株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)
- 三菱UFJ銀行100%出資:日本電子債権機構株式会社(JEMCO)
- 三井住友銀行100%出資:SMBC電子債権記録株式会社
- みずほ銀行100%出資:みずほ電子債権記録株式会社
などです。
ご覧の通り「銀行」がでんさいを管理する機関となっていますので安心です。
金銭債権を電子データとして公的に管理するのですから、信頼性がなければ対応不可能ですし利用するユーザーも安心して利用できませんから、当然といえば当然ですね。
「でんさい」のデメリット
ここまで読まれた方には、
「でんさいってメッチャいいじゃん!」
と、お思いかもしれませんが
やはり「でんさい」にもデメリットはあります。
債権を「でんさい」のみに統一するのが困難
債権が全て「でんさい」に切り替われば、全てデータで管理できるので一番スッキリするのですが、現実問題としてなかなか難しい面がありますよね。
これまで通りの売掛金や手形での取引も継続しつつ「でんさい」を導入するという会社がほとんどではないでしょうか。
そうすると、単に債権の種類がこれまでの「売掛金」や「手形」に加えて「でんさい」がひとつ増えるため、当然ながら事務処理が増えます。
さらに、勘定科目も追加することになりますので、経理の手間も増えます。
取引先もでんさいを利用していないとダメ
取引先が「でんさい」を導入していないと利用できません。
➡「でんさい」はあくまでも「でんさい」を導入している企業同士で取引可能となるシステムです。
利用手数料が発生する
売掛金や受取手形はシステム利用が不要なので(振込手数料はかかりますが…)システム利用に関連する手数料がかかりませんが、「でんさい」は「でんさいネット」という独立したシステム上で行われますので、運営のための手数料がかかります。
「でんさい」のまとめ
いかがでしたでしょうか。
これからの時代は「でんさい」のような電子データのやりとりをメインとする取引が増えていくと考えられますので、個人的には積極的に導入されるべきと思いますが、実際にはデメリットがネックとなり導入まで至っていない企業もあります。
お互いに「でんさい」を利用している企業でなければ利用できないという点が一番のポイントかもしれませんね。
あくまで管理人の印象ですが、大手企業のほとんどが「でんさい」を導入している一方で中小企業ではその導入率はまだまだ低いと感じています。
しかしながら「でんさい」自体のメリットは大きく、また大手企業との取引がある場合、相手企業からでんさいの利用を求められる場合もありますので、仕組みを理解しておくことが重要ではないでしょうか。