簿記|知れば得する万能スキル

経理

こんにちは。事務屋さんブログ管理人イサムです。

あなたは「簿記」ごご存じでしょうか。

ほとんどの方は「知っている」または「聞いたことがある」と思いますが、実際に「簿記」を利用して会社の「帳簿書類」を作成したことがあるという人は少ないかもしれません。

こうした帳簿の作成には、簿記の知識がかかせないのですが、それだけではなく、簿記の知識が身に付いていると、帳簿の作成以外のこと、例えば「投資」などにも役立てることができます。

ここでは、そんな簿記の概要をご紹介します。

簿記|そもそも簿記とは

「簿記」とは、会社や個人事業主などの事業者が、その事業の中で継続的に発生する様々な取引を帳簿に記録するために必要な「方法」であり「技術」です。

事業を運営していく中で、様々な取引が発生します。その取引内容を「簿記」のスキルを使って記録することで事業の業績を正確に把握することができます。

業績を正確に把握することは、法人・個人に関わらず、すべての事業者にとって非常に重要なポイントであり、継続して事業を運営するための基本となります。

そのために必要な技術が「簿記」です。

★簿記の種類

簿記には「単式簿記」(たんしきぼき)と「複式簿記」(ふくしきぼき)という2種類あります。

  • 「単式簿記」~ 家計簿や小遣い帳などのような、割と生活に密接した身近な簡易帳簿として利用される記録方法です。
  • 「複式簿記」~ 法人、個人を問わず事業を行っている場合に利用することを推奨されている記録方法です。

単式簿記と複式簿記の具体的な違いは、単式簿記と複式簿記|かんたん解説の記事でご確認ください。



簿記|イメージして理解度を深める

「5W1H」の要素を事業の取引に当てはめてイメージしていくと、簿記の理解度を深めることに役立ちます。

5W1Hとは、下記の通り英語の頭文字をとったものの集まりです。

  • いつ (When)
  • どこで(Where)
  • だれが(Who)
  • なにを(What)
  • なぜ (Why)
  • どのように(How)

かんたんな例題で考えてみます。

例題

6月19日 会社のコピー機で使用するコピー用紙が無くなったので、社員A君B文具屋さんで1,000円現金で払って買ってきた

この例題を「5W1H」の要素を用いて分解してみます。

  • When(いつ)➡ 6月19日
  • Where(どこで)➡ B文具屋さん
  • Who(誰が)➡ 社員A君
  • What(何を)➡ コピー用紙
  • Why(なぜ)➡ コピー用紙が無くなったため
  • How(どのように)➡ 1,000円(現金)で購入

以上の通り、取引がどのように組み立てられているのかが明確になりました。

ここまで分解できたら、あとは簿記のルールにもとづいて帳簿に記録します。


★参考

例題を仕訳すると下記の通りとなります。※簿記のルールのことを「仕訳」(しわけ)といいます。

仕訳(しわけ)
〈日付〉〈借方〉〈貸方〉〈金額〉〈摘要〉
6月19日事務用品費現金1,000B文具屋でコピー用紙購入

仕訳についてはコチラの記事で詳しく解説しています。



簿記|事業内容の正確な把握に役立ちます

会社の取引を「簿記」によって記録していくことで正確な帳簿が完成します。その帳簿の数字をもとにして事業の方向性・将来性を判断します。

つまり、会社の儲け(利益)を合理的・正確に管理し、事業を将来性豊かに継続していくために簿記が重要な役割を果たしています。

逆に言えば、簿記を利用しなければ、事業内容の把握は困難です。

事業の中で、儲かっているかどうかは「簿記」で記録する事で初めて合理的に「数字」に表れます。特に仕訳の数が多くなればなるほど、簿記の重要度・貢献度は高くなります。

したがって、簿記による記録ができていない会社では、事業の継続が困難になるかもしれません。

どんぶり勘定の社長
どんぶり勘定の社長

いや~、なんとなく今月儲かった気がするな~

という社長がどこかにいるかもしれませんが、「なんとなく」という「感覚」では、事業における正確な数字は把握できません。

感覚的に「儲かった」と感じるのではなく、客観的な数字として「儲け」を表すのが簿記最大の役割であり最も重要なポイントです。



簿記|どんぶり勘定の危険性

事業者は、原則として1年間の商売で蓄積した儲けから税金を計算し納付します。

法人(会社)であれば「法人税」、個人事業主であれば「(申告)所得税」です。

税金を正確に算出するためには、日常取引を確実にもれなく記録している必要があります。簿記の活用が必須です。

「どんぶり勘定」的に日常取引を把握しようとすると、取引が多くなればなるほど、どこかでつじつまが合わなくなります。その結果、正確な数字(利益)が把握できないだけでなく、最終的に手元に残ったお金が、どういうプロセスを経て残ったのか把握できません。

事業では「利益」と同じくらい「お金(キャッシュ)」がどれくらい残るのか、といういわゆる「キャッシュフロー」が重要な要素です。

日々、簿記によって正確な帳簿を備えていれば、正確なキャッシュフローが把握でき、たとえ赤字だったとしても、資金的に大丈夫かどうかを判断できますが、どんぶり勘定では黒字なのに手元にお金が残ってない、税金が払えない、という事態も起こりえます。

こういったことが起きないように、事業の数字を正確に管理し、確実に把握するために「簿記」という技術は存在しているのです。



簿記|「投資」に活用

簿記ができるようになると、会社の「決算書」が読めるようになります。

決算書とは会社の1年間の数字をまとめた集大成資料ですが、この決算書を読めるようになると、その企業の業績を理解できるようになります。

企業の業績が理解できるようなれば、その企業のこれまでの業績や今後の見通しなどから「投資」のための参考資料として役立てることができるようになります。

つまり、簿記を理解することで「投資」に役立つスキルとして使えるようになります。株式投資などを考えているのなら、簿記の決算書を読み解くスキルは必須です。

簿記|メリット

青色申告制度

簿記によって記録された帳簿を備えておくことで「青色申告」(あおいろしんこく)という制度を受けることができます。

この制度は、税金の計算をする際に税金が安くなったり、赤字(欠損金)を翌年以降に繰越できたりなど、税金面で非常に優遇されています。

この優遇措置を受けることができるという事が、簿記による帳簿をつける最も大きなメリットです。

経営状態の把握が容易

簿記によって作成された帳簿を見ると、リアルタイムで会社の経営状態を把握することが可能です。たとえば、会社の経営状態が悪化・資金繰りに困った・業績好調で何か節税対策を取りたい…、などのような場合に、どういった対策をとるとよいのか、有効な経営判断をスピーディに下すことができます。

対外的信用度の獲得

簿記による帳簿は、外部、特に金融機関等への「信用」に直結します。

たとえば、事業用資産(建物・機械・車・備品など)が老朽化し、修理や買い替えなどの「多額の支出」を必要とする時、簿記の活用で作成された帳簿が備わっていれば、金融機関等からの融資をスムーズに受けられる可能性が高まります。

融資=借金なので、躊躇される方もいるのは事実ですが、長いスパンで考えた時、自己資金で設備投資の支出をまかなうよりも、金融機関等からの融資で設備投資したほうが、自己資金(事業用資金)が目減りしないので、本業の経営が安定します。

金融機関では、融資審査において帳簿の正確性、信ぴょう性を重視しますので「どんぶり勘定」的な帳簿は明らかなマイナス要素であり、対外的信用度に欠けます。貸したお金を返してもらえないというのが金融機関にとっての一番のリスクなので、帳簿の正確性と信ぴょう性という側面は非常に重要です。

そういった点で簿記が大いに役立ちます。

簿記|事業の永続性に必要な根本的スキル

典型的な悪循環

どんぶり勘定 ⇒ 経営状態の正確な把握が困難 ⇒ 気づいた時には経営状態悪化 ⇒ 赤字転落 ⇒ 資金不足 ⇒ 事業継続困難⁉

上記の悪循環は、どんぶり勘定が諸悪の根源です。

資金不足が解消できれば、事業を継続していけるかもしれません。しかしそれには金融機関からの当面の運転資金としての「融資」が必要不可欠であり、「どんぶり勘定」が改善しなければ、金融機関からの融資は難しく、事業継続は困難に陥ってしまう可能性が高くなります。


理想的な循環

簿記の利用で正確な帳簿 ⇒ 経営状態の正確な把握 ⇒ 適切な経営判断 ⇒ 永続的な事業の実現

一方、上記のような好循環であれば、経営状態を常に正確に把握でき、たとえ経営状態が悪化したとしても、適切な経営判断ができる情報が揃っていますし、金融機関も融資審査の目をポジティブに向けてくれるでしょう。

その結果、安定的で永続的な事業の継続が可能となります。

簿記による帳簿作成はそれなりに手間がかかりますが、税金面での優遇や信用度の面、永続的な事業の実現、投資への活用など、様々な点でメリットがいろいろありますので、最大限活用できるよう、その基礎をおさえておきましょう。