この記事では
といった内容について深掘りしています。
単式簿記も複式簿記も、名前は聞いたことはあるけれど、いまひとつ違いが微妙というあなたに向けたかんたん解説です!
単式簿記と複式簿記|基本の解説
簿記には大きく分けて「単式簿記」と「複式簿記」この2種類の方法があります。
区別の仕方
かんたんな区別方法は次の通りです。
それぞれの得意分野
「単式簿記」の得意分野は、ご家庭での「家計簿」や「お小遣い帳」などの単純取引の記録です。
一方「複式簿記」の得意分野は、会社・フリーランス・個人事業主など、商売(事業)によって発生する複雑な取引を記録する「会計帳簿」です。
単式簿記と複式簿記|比較してましょう
下記の取引①~⑤を使って、この取引を記録するプロセスと、それを図表にしたものをご紹介していきます。まったく同じ取引を、単式簿記・複式簿記のそれぞれの方法で記録しましたので、両者の違いに注目して確認してみましょう。
取引内容は下記の①~⑤です。
① 売上金 100,000円 現金で受け取り |
② 電気代 5,000円 現金で支払い |
③ 電話代 15,000円 現金で支払い |
④ 保険代 10,000円 現金で支払い |
⑤ 貯 蓄 20,000円 現金を普通預金へ預入 |
これを「単式簿記」で表にしたものが左側で「複式簿記」で表にしたものは右側です。

単純にこの図表を見てわかる事ですが、まず列の数が違います。
★単式簿記では「項目」欄と「金額」欄の2列。
★複式簿記では「借方(かりかた)」欄と「貸方(かしかた)」欄と「金額」欄の3列。
もう一つわかることは、項目欄に記録されている名称が違うという点です。
単式簿記の項目では、日常会話で使う「電気代」とか「電話代」という名称で記録していきますが、複式簿記では、一般的には日常会話的な呼び名を項目名としては使いません。
複式簿記の場合は、例えば
というように、日常会話で使う言葉ではなく、取引内容に応じて該当する名称を選択しその名称を帳簿の記録に使います。
その項目名のことを「勘定科目」(かんじょうかもく)といいます。
★勘定科目については、 勘定科目|5つの大分類で把握しよう!
をご確認ください。
単式簿記と複式簿記|それぞれの特徴
単式簿記は「家計簿」や「お小遣い帳」で使われる形式です
家計簿で考えてみましょう。
家計簿は、通常「支出」の項目が「現金」であることを前提としています。それは手元にある財布の中身(現金)が基準となっているからです。したがって、何の支払に使ったのかという項目だけを記録すればいいですし、その使った金額だけを記録すれば家計簿が完成するような単純構造になっています。
ですから、上記例のように、記録すべき「項目名」は日常会話で使う言葉で問題ないですし「金額」も1列あれば足りるのです。
非常にわかりやすく簡単で、誰にでも記録できるという点が家計簿に代表される「単式簿記」最大の特徴です。
複式簿記は会社や個人事業の「会計帳簿」で使われる形式です
会社や個人事業などの事業を営む場合では、家計簿では対応しきれない「現金」以外の様々な取引が発生します。そのため、相手科目を「現金」などの単一科目に固定して記録する「単式簿記」よりも、相手科目を自由に変更して記録可能な「複式簿記」が一般的には向いています。
したがって、少し手間はかかるものの、1つの取引を左側と右側の2つに分解して記録する「複式簿記」が事業の取引を記録する上ではよく利用されています。
ちなみに、取引を細かく分解して記録する方法のことを「仕訳(しわけ)」と言います。この仕訳というテクニックを利用することが「複式簿記」の大きな特徴で、取引相手科目が何であっても、効率的に、正確に帳簿に記録する事ができます。
★仕訳については、仕訳(しわけ)|初心者必見!仕訳の基本解説 をどうぞ
単式簿記と複式簿記|仕訳による違い
では、先に利用した例題①~⑤の取引を再度確認してみましょう。
この例題では、実は理解しやすいようにあえて取引相手を全て「現金」に統一してご紹介しました。
しかし、例えば、電気代と電話代が「現金」での支払いではなく普通預金口座からの「口座引落」だったとするとどうでしょう。
②と③が変わりました。「現金」の場合と「普通預金」の場合、一連の取引内容の中に、2つのパターンが含まれている事になります。
相手を単一科目に固定して記録する「単式簿記」では、上記のように相手が「現金」と「普通預金」の2つに分かれてしまうと、相手が「現金」である「売上金」「保険代」「貯蓄」と相手が「普通預金」である「電気代」と「電話代」の取引を、同じ帳簿に記録する事ができません。
どうしても単式簿記で普通預金からの引き落とし分も記録したいという場合は、「現金」の場合と同様に相手を「普通預金」に固定した、全く別の単式簿記帳簿を追加で作らなくてはなりません。
つまり、単式簿記では、取引の相手が変わるごとに「その相手」固定の帳簿を作成する必要があり、取引が増えれば増えるほど、その都度新たな帳簿を追加していかなければならないのです。
ものすごい手間で、考えただけでもゾッとします。
ここが「単式簿記」と「複式簿記」の決定的な違いであり「単式簿記」にとっての最大のデメリットといっても過言ではありません。
事業の取引には、様々な相手を要する取引がたくさんあります。単式簿記で、これら全ての取引を記録していくためにはその取引ごとに別々の家計簿的帳簿を作っていかなければならないので、その作業だけでかなり「煩雑」で「非効率的」であり、管理も大変です。
こういった問題を全て解決したのが「複式簿記」なのです。
単式簿記のデメリットを解決したのが「複式簿記」!
複式簿記であれば、常に取引を2つの点から記録していくので、単式簿記のように取引ごとに新しく帳簿を用意する必要がなく、様々な取引を一つの帳簿で効率的に記録できます。
ただし、複式簿記による帳簿作成には、簿記の仕訳ルールを習得しなければならず、その点において少し手間がかかり、難しさを感じるかもしれません。
そこをクリアできれば、非常に作業効率が高く、正確でスッキリとした帳簿が出来上がります。
単式簿記と複式簿記のまとめ
取引には必ず2つの側面があります。
- その1:何の収入か、何の支払いか、という具体的な取引内容の「原因」的側面
- その2:その取引をどうやって処理したか、という「結果」的側面
たとえば、電気代を現金で払った、という場合、
- 原因:電気代の支払(水道光熱費の増加)
- 結果:現金での支払(現金が減少)
⇒ 単式簿記は「原因」だけを記録していく方法。
家計簿やごく小規模な事業においては記録が簡単で管理しやすい方法ですが、取引が増えてくると管理が難しくなります。
⇒ 複式簿記は「原因と結果」をセットで記録していく方法。
簿記の仕訳ルールを習得していることが前提の記録方法ですので、仕訳ルールを学ぶという手間がありますが、事業で発生する取引を全て同一帳簿で記録・管理することが可能なのでリアルタイムに事業内容や売上や利益の把握ができ、データ・情報量が圧倒的です。
単式簿記、複式簿記それぞれに長所もあれば短所もあり、得意とするシチュエーションも違います。
単純にどちらかが良くてどちらかがダメ、という事ではなく、家計簿ならば「単式簿記」で、商売の帳簿は「複式簿記」で、というように、それぞれの特徴を理解して適材適所で活用していきましょう。