損益分岐点(そんえきぶんきてん)は経営分析の中でも割と取り入れやすく、それでいてとても重要な指標です。
この指標を知ることができると、事業を営む上で、黒字を目指すための数字が見えてくるので、非常に有効な指標となります。
それは大企業だけでなく、中小企業から個人事業主までもちろん使えます。
そこで、今回は、損益分岐点のそもそもを知りたいあなた、そして損益分岐点の中身を理解して自社の経営分析に活用したいというあなたに向けた内容になっていますので、どうぞご参考にしてみてください。
損益分岐点|どういった経営分析か
損益分岐点とは、売上と費用がプラスマイナスゼロになるポイントのことです。
つまり、事業を営む上で計上される「売上高」と、事業を営む上で発生する「費用」の数字が同額となり、いわゆる「収支がトントン」となる地点の数字を損益分岐点といいます。
したがって、損益分岐点を超える売上高が計上されれば「黒字」となりますし、損益分岐点を超える費用が計上されれば「赤字」ということになります。
最初にお伝えした通り「黒字化」を目指すための目標がこの損益分岐点です。ですから、自社の損益分岐点を知っているかどうかが、事業の経営にとってとても重要なのです。
その意味で損益分岐点を理解して活用できるようになると、利益の確保・拡大に役立てることができるでしょう。
損益分岐点|基本の解説
損益分岐点とは「収支トントン」となる数字であるということは既にお伝えしましたが、具体的に数字で見てみましょう。
例
- A商品1個の販売価格 10,000円
- A商品1個の原価(変動費)6,000円
- 1ヶ月にかかるその他費用(固定費)500,000円
上記の例の場合に、収支トントンとなる売上を求めること=損益分岐点の答え、となります。では実際に計算してみます。
A商品1個の販売による利益 ➡ 10,000円 - 6,000円 = 4,000円の利益
1ヶ月にかかるその他費用(固定費) 500,000円 ÷ 利益4,000円 = 125
➡ A商品を1カ月当たり「125個」販売すると「収支トントン」となる、ということがわかる計算結果です。
➡ A商品の1個当たり利益 4,000円 × 125個 = 500,000円 ということです。
では、上記条件の中で、A商品を130個販売したとするとどのような計算となるでしょうか。
実際に計算してみます。
A商品の1個当たり利益 4,000円 × 130個 = 520,000円
A商品130個販売の利益 520,000円 - その他費用(固定費)500,000 = 差引利益 20,000円
➡ A商品を130個販売すると、損益分岐点の「500,000円」を超えて「520,000円」を達成したことから、「20,000円の黒字」になったことがわかりました。
それほど難しい計算ではないですよね。この考え方が損益分岐点の基本的な構造です。計算自体はきわめてシンプルです。この基本構造を理解することで、事業の黒字化が見えてきます。
損益分岐点|費用の考え方(固定費と変動費)
以前、費用の分類として「固定費」と「変動費」という考え方をご紹介しました。
損益分岐点を計算するうえで、この固定費と変動費の分類が重要になってきます。
軽くおさらいすると
- 固定費 ~ 売上に直接関係なく毎月一定額かかる費用
- 変動費 ~ 売上に直接関係する、売上の上げ下げに伴って変動する費用
以上の通りです。両者の違いをポイントとしておさえておきましょう。
上記例で用いた「A商品の原価6,000円」という費用は、A商品が売れれば売れるほど増加する費用なので「変動費」です。
一方、上記例で用いた「1カ月にかかるその他費用」は、毎月かかる社員への給料や家賃、保険料などが該当します。こうした費用は、売上の増減に関係なく毎月一定額かかる費用ですから「固定費」です。
損益分岐点|損益分岐点の売上高を求める計算式
損益分岐点の売上高を求めるための計算式は次の通りです。
損益分岐点の売上 = 固定費/限界利益率
では、簡単な数字を使って「損益分岐点売上高」を求めてみましょう。
例
売上高 10,000 / 変動費 2,000 / 固定費 4,000 のとき
次の3STEPが必要です。
①利益を求める
売上高 10,000 -(変動費 2,000 + 固定費 4,000)= 差引利益 4,000
②限界利益、及び限界利益率を求める
・売上高 10,000 - 変動費 2,000 = 限界利益 8,000
・限界利益 8,000 ÷ 売上高 10,000 = 限界利益率 80%
③損益分岐点売上高を求める
固定費 4,000 ÷ 限界利益率80% = 損益分岐点売上高 5,000
以上の計算の結果、売上高10,000、変動費4,000、固定費2,000 のときの「損益分岐点売上高」は「5,000」ということがわかりました。
つまり、売上高が10,000 ➡ 5,000 まで下がっても、収支トントンで赤字にはならないという事を意味しています。
※補足
固定費2,000は売上が減っても変わりませんから「2,000」のままです。
一方、変動費は売上が減るとそれに伴って減ります。つまり、売上が5,000まで減ると、変動費もそれに伴って4,000から「3,000」に減少したことがわかります。
➡ 損益分岐点売上 5,000 - 固定費 2,000 = 変動費 3,000 という事です。
損益分岐点|おすすめの活用法
損益分岐点の指標を使ってできるオススメの活用をご紹介します。
損益分岐点売上高を算出する計算に、あなたが目標とする「営業利益」の金額を加えると、その目標とする営業利益を達成するために必要な「損益分岐点売上高」がいくらなのかを算出することができます。
前段で使用した数字で再度考察してみましょう。
損益分岐点とは収支トントンですから、損益分岐点売上高 5,000 ということは
➡ 売上高 5,000 -(固定費 2,000 + 変動費 3,000)= 0(収支トントン)です。
例えばここで「この状態から利益を2,000出したい」というを目標値と定めたとします。
その場合には、損益分岐点売上高の計算式に目標とする利益をプラスして再度計算すると、その目標を達成するために必要な損益分岐点売上高を求めることができます。
➡(固定費 4,000 + 目標利益 2,000)÷ 限界利益率80% = 損益分岐点売上高 7,500
以上の通り、利益2,000という目標を達成するためには、現状の損益分岐点売上5,000から、7,500まで増やす必要があるということがわかりました。このように数字を当てはめることで、明確な目標値が出ますので、毎期の事業計画の策定に役立てることが可能です。
損益分岐点|まとめ
損益分岐点は事業を継続していくうえで非常に重要な指標です。
また、それとともに「限界利益」「変動費」「固定費」といった付随して派生する経営分析、会計用語についても理解しておくことが大事なポイントです。
費用を最小限におさえ、利益を確保するためにこれらの指標と考え方は必要不可欠ですので、損益分岐点=黒字と赤字の境目を見極めて、今後の効率的な事業運営に役立ててみてはいかがでしょうか。