減価償却費|定額法と定率法をマスターして初心者脱却!

税務

今回は前回ご紹介した減価償却費|ポイントをおさえて速攻理解!|かんたん解説の続編となります。

前回では減価償却費の基本となる考え方と仕組みについて解説しましたが、続編となる今回は、減価償却費についてもう1段階深堀りすべく減価償却費の金額を決定するカギとなる「定額法」と「定率法」という2種類の計算方法についてご紹介します。

減価償却費|定額法(ていがくほう)

まずは「定額法」のご紹介です。

定額法とは、その名称の通り「定額」、つまり毎年同じ金額を均等に減価償却費に計上していく方法です。

計算式:取得価額 × 定額法の償却率 です。

かんたんな数字を当てはめて計算してみると次のようになります。

20万円のパソコン(新品)購入 パソコンの耐用年数4年 の場合

耐用年数4年の場合 ➡ 定額法の償却率 = 0.250

(※参考 国税庁HP:減価償却資産の償却率等表

20万円 × 0.250 = 5万円

4年で均等に償却していくわけですから、1/4ずつという事ですね。

つまり ➡ 1÷4=0.250 という償却率になります。

定額法は、4年の間ずっと1/4ずつ同じ金額を減価償却費として計上していきますので、毎年計算式も金額も同じです。

前回の減価償却費かんたん解説にて説明しましたが、必ず最後に「備忘価額1円」を残さなければなりませんので、1~3年目は 毎年50,000円の減価償却費で、最終年は「49,999円」となります。


※補足

取得時期が期の途中の場合、その年度の減価償却費は月割り計算となります。

★12月決算で10月に上記例のパソコンを取得した場合、使用期間は10月から12月までの3ヶ月間で決算を迎えますので、その場合は

20万円 × 0.250 × 3/12 = 12,500円

という計算となります。この取得時期で月割りする考え方は定額法も定率法も同じです。

減価償却費|定率法(ていりつほう)

続いて「定率法」です。

定率法は、定額法と異なり、毎年償却金額が変動します。

なぜ変動するのかというと、定額法では償却率を掛ける対象 ➡「取得価格」であるのに対し

定率法の場合の償却率を掛ける対象 ➡「未償却残高」になるためです。

(※ただし、初年度については「取得価額」です)

具体的に見てみましょう。

20万円のパソコン(新品)購入 パソコンの耐用年数4年 の場合

➡ 定率法の償却率 0.500(※参考 国税庁HP:減価償却資産の償却率等表より)


 初年度 2年目 3年目 … 
未償却残高(期首) 200,000  100,000  50,000  …
定率法の償却率  0.500  0.500  0.500  …
減価償却費計上額 100,000 50,000 25,000 …
未償却残高(期末) 100,000 50,000 25,000 … 

上記の通り「未償却残高」を基準に償却率を掛けて計算し、定額法と同様に備忘価額1円まで償却していきます。

減価償却費|定額法と定率法の違いで注目すべき点

上記の償却方法をご覧いただくとわかると思いますが、定額法と定率法では1円になるまで減価償却費を計上していくので「減価償却費」として費用計上するトータルの金額はどちらも同じですが、1年あたりに計上する減価償却費の金額が異なります。

「定額法」では毎年同じ金額を均等に費用計上するのに対し「定率法」では初年度が最も多くの金額を減価償却費として計上でき、その後徐々に計上する金額が少なくなっていく、という特徴があります。

減価償却費は必要経費の中でも比較的大きなウエイトを占めることが多いので、この違いで税金の金額に影響が出ます。注目しておきましょう。

結局どっちが節税になる?

実際には、耐用年数トータルで見た時に、どちらの場合も備忘価額1円まで費用計上できるので、金額的な違いはなく、どちらも同額で、数字上は得も損もありません。

特徴としては、定額法の場合、毎年同じ金額の費用を計上していくので、長期にわたって費用の金額を予測しやすいというメリットがあります。

そのため、将来的な事業の計画を立てるときに便利だと思います。

一方、定率法は取得年度から数年の間に大きく費用計上し、その後徐々に費用計上できる償却費が少なくなっていきますので、利益が多く計上されるような年度が2~3年続きそうな見通しの場合に利用すると、定額法よりも「節税」効果が期待できます。その場合においては、定額法よりも効果的な節税方法と言えるでしょう。

減価償却費|償却方法の選択には「しばり」があるので注意!

定額法と定率法は、いつでも、好きな時に、どんな資産に対しても有利な方を選択できる、

という訳ではありませんのでご注意ください。

ポイントをまとめました。

  • 建物・付属設備・構築物に該当する資産を購入した場合は「定額法」が自動的に選択され、定率法は選択できません
  • その事業年度が始まる前までにどちらの償却方法を利用するか所轄の税務署長へ届け出なければなりません
  • 資産の種類ごとに定率法・定額法を分ける事は可能(器具備品は定率、機械は定額など)
  • 事業所ごとに定率法・定額法を分ける事は可能(東京本社は定率、横浜支店は定額など)

実際の実務で考えると、資産ごとや事業所ごとに償却方法を変えるという方法は非常に手間がかかり、管理も大変なので、どちらかの償却方法に統一するのが一般的です。

実務的には、取得年度から数年大きく償却できる節税効果を期待して「定率法」を選択する場合が多いという印象です。

届出書を提出していない場合

どちらの償却方法を選択するか税務署へ届け出ていない場合は、原則として

法人 ~ 建物、付属設備、構築物は定額法、それ以外は定率法

個人 ~ 定額法

と自動的に決定されます。

ですから、法人で、全資産の償却方法を「定額法」にしたい、または個人で、全資産の償却方法を「定率法」にしたい、という原則と違う償却方法を選択したいときには、届出書をあらかじめ提出しておかなければなりません。

届出書の様式は下記の通りです。ご参考まで。