今回のかんたん解説シリーズは「減価償却費」です。
「減価償却費」(げんかしょうきゃくひ)という言葉はよく聞くけれど、具体的な仕組みや費用計上の方法など、不明なナゾ点が多いのも「減価償却費」の特徴ではないでしょうか。
この記事では、特に経理初心者やフリーランス1年目といったまだ会計帳簿に慣れていないあなたに向けた「減価償却費」の内容をなるべくかんたんのいわかりやすく解説していきたいと思います。
減価償却費|そもそも減価償却費とは
まずは減価償却費とは何か。
減価償却費とは
事業で使用する高額なもの(ひとつで10万円以上するようなもの)を購入した場合に購入したときに1回で必要経費として落とすのではなく、数年に分割して必要経費として計上していくもの
です。
「数年に分けて」というのが重要なポイントです。要チェックです。
減価償却費|数年に分割して費用計上する理由
ではなぜ高額なものは1回で必要経費で落とせないのでしょうか?
実際のもので考えてみましょう。
例えば、事業用として20万円のパソコンを購入したとします。パソコンを購入して事業で使い始めれば、数年使用します。毎年新しいパソコンに買い換えている、という方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、数年にわたって利用するのが普通だと思います。
会計の考え方の中に、数年にわたって使えるものは、その使える年数に応じて経費で落とす、という原則があり、まさにこの考え方が「減価償却費」なのです。
減価償却費|分割の年数はあらかじめ決まっています
では、数年で経費に計上していくというその「数年」て何年なのか、という話ですが、実は、取得するものによって経費で落としていける年数はあらかじめ決められています。
ものすごく雑に言うと、
- パソコンならこれくらい使えるよね~、っていう年数
- 車ならこれくらい使えるよね~、っていう年数
基本的にはこのような考え方です。これを「耐用年数」(たいようねんすう)といいます。
耐用年数一覧表は国税庁のホームページで一覧表になっていますので興味のある方はご確認ください。
※引用:国税庁ホームページより
減価償却費|おさえておきたい3つのポイント
購入したものは「資産」に計上
例えば20万円のパソコンなら、「器具備品」という勘定科目で「資産」に計上します。
「1年目に5万円の減価償却費を計上した場合」の仕訳は次の通りです。
〈借方〉 | 〈貸方〉 | 〈金額〉 | 〈摘要〉 | |
購入時: | 器具備品 | 現金 | 200,000 | 事業用のパソコンを購入 |
費用計上時: | 減価償却費 | 器具備品 | 50,000 | 減価償却費計上(パソコン) |
このように、購入の時点で「器具備品」という資産科目へ計上します。
減価償却費を計上するときには、器具備品の金額からマイナスします。
つまり、減価償却費が計上されると、パソコンの帳簿価額は「20万円」から5万円マイナスされ「15万円」となります。
「資産」てなんだっけ?というあなた。コチラの記事でご確認下さい。
自動車販売店さんが購入する自動車の処理は?
減価償却費として経費計上できるものは「事業用として使用する」ものです。
自動車販売店で考えてみましょう。
顧客へ販売するための車両を購入した場合
➡ 自社の「販売目的」のために購入したものですから、「仕入」に計上します。
営業社員が、顧客先へ営業まわりをするために使用する車両を購入した場合
➡ 自社の「事業用として使用」するものですから「減価償却費」で計上します。
「車両を購入」という点ではどちらも同じですが、「目的」が異なるため、処理方法が変わってきます。
- 仕事で日常的に使うものは「減価償却費」
- 販売目的で購入するもの(=商品)は「仕入」
この点にご注意ください。
長く使えるものは全部「減価償却費」なの?
長く使えるものでも、金額が安いものは買った時に経費として全部計上OKです!
一番最初の囲みにも書きましたが、金額が10万円以上するもの、という原則です。
ですから、パソコンでも、10万円以下で購入できるものなら1回で経費として計上できます!
減価償却費|償却年数が全部経過した後は?
20万円で買った事業用パソコンは、減価償却費で計上していくと最後はゼロ円になるのかどうか、というポイントですが、具体的な数字で見ていきましょう。
20万円のパソコンを4年かけて均等に費用に計上していくとすると、
20万円 ÷ 4年 = 5万円
ですから、毎年5万円ずつ「減価償却費」として費用計上していきます。
一方、購入したパソコンの20万円という取得金額は、
通常の流れで行くと、上記の通り、4年目に「ゼロ」になります。
しかし、会計の原則では、最後ゼロにしてしまうと、帳簿から完全に消えてしまって忘れてしまうので、償却期間が全部経過しても、そのパソコンを捨てずに使用している(存在している)間は、ずっと「1円」のままにする、という事になっています。
この1円を備忘価額(びぼうかがく)と言います。
1円になったものは、それ以上減価償却費を計上できませんので、そのパソコンを廃棄処分するまでずっと帳簿に「1円」で残っていきます。
つまり、最後の年の減価償却費は、
50,000円ではなく「49,999円」が計上されて
パソコンの帳簿価額1円(器具備品の帳簿価額)となります。
減価償却費|まとめ
減価償却費のおさえておきたい最初の基本ポイントは以上のとおりです。
今回ご紹介したポイントをガッチリおさえておきましょう!。
償却方法(定率法、定額法)の解説はコチラの続編をご覧ください。