年末調整(ねんまつちょうせい)|かんたん解説

税務

今回の話題は「年末調整」(ねんまつちょうせい)です。

会社員のあなたにはもうおなじみですね。今年もそんな季節がやってきました。

ところで、あなたは「年末調整」を正確に理解できていますでしょうか?

会社から毎年同じような紙をもらって、その用紙になんとなく去年と同じように記入して、そのままなんとなく提出しちゃっている、という場合がほとんどではないでしょうか。

そんなあなたに向けて、年末調整の基本を解説します。

年末調整の仕組みを知ると、税金がお得にできちゃう!?

かもしれません。

この記事では

  • 年末調整とはなに?
  • 用意しなければならない書類は?
  • 税金がお得になるコツ
  • 年末にお金がもらえる!?

などについて具体的に見ていきますので、どうぞごゆるりと。

年末調整|年末調整とはなに?

まずは年末調整のそもそもから。

ズバリ、年末調整とは

年に一度(年末)に、あなたの給料から毎月差し引かれていた「所得税」「過不足分の差額」「調整」する

ということを意味しています。

法人に対して「法人税」という税金がかかるのと同様に、個人には「所得税」という税金がかかります。

  • 会社員の場合は、1年間の収入(給料)を集計して「年末調整」によって最終的な所得税額を算出します。
  • 個人事業主・フリーランスの場合は、1年間の収入(事業収入等)を集計して「確定申告」によって所得税額を算出します。

同じ所得税でも個人の立場の違いによって算出方法が異なりますので要チェックです!

で、会社に勤めていて給料を毎月もらっている場合、所得税は毎月給料から天引きされていますね。

年末調整とは、毎月給料から差し引かれていた所得税額の1年間の合計と、1年間の給料合計(ボーナスも含みます)から計算して算出した最終的な所得税額を比べて、その差額を調整するという仕組みなのです。

★重要用語:源泉徴収(げんせんちょうしゅう)

ちなみに、給料から差し引かれた所得税は、会社が一旦「預かって」、あなたに代わって「国へ納税」しています。この方法を「源泉徴収」と呼びます。

給料からの天引きだと、あなた自身「毎月所得税を納付している」という自覚が無いかもしれませんが、差し引かれた所得税は、毎月会社が、あなたに代わって納税しているのです。

年末調整|計算構造は3ステップ

では早速、年末調整の基本的な構造をご説明します。

基本は「3ステップ」です。

ステップその1 控除の確認

第1のステップは「控除(こうじょ)の確認」です。

控除とは何?という事ですが、簡単に言うと、所得税の計算をする中で、計算対象となる所得から「差し引く事ができるもの」です。

ステップその2 年税額の算出

第2のステップは「年税額の算出」です。

所得から控除を差し引いて残った課税所得金額から最終的な年税額(所得税額)を算出します。

この計算であなたの1年間の収入に対する「所得税額」が算出されます。

ステップその3 過不足額の精算

第3のステップは「過不足額の精算」です。

毎月源泉徴収されていた所得税額の合計額と、ステップ2で算出した最終的な所得税額を比べて、金額の差額を清算します。ここが最終地点です。

ここで忘れてならないのは「過不足額」であるという事です。

年末調整と聞くと、一般的には「所得税が戻る」イメージが強いかもしれませんが、実は戻るだけではなく、逆に所得税額を年末に追加で「徴収」されるパターンもあります。

お忘れなく。

年末調整|税金をお得にするコツ

上記3ステップのうち、ステップ2、3は会社側で計算します。社員側で重要なのがステップ1の控除の確認です。

控除の確認によって所得税の金額が大きく変わってきます。

年末調整の最重要ポイントです。

年末調整で所得税をお得にしたいのであれば、この「控除」の内容をしっかりと理解することがポイントとなります。

「控除」と「所得税」の基本的な計算と考え方

では、簡単な計算式を用いて、年末調整によって所得税がお得になる仕組みを解説します。

非常にシンプルです。

例①:所得100万円 所得税率5% 控除無し の場合  

★所得税額 = 100万円×5%=5万円


例②:所得100万円 所得税率5% 控除40万円 の場合

(計算方法は、所得から控除を差し引いて、その後税率を掛けるだけです)

★所得税額 = 100万円-40万円=60万円×5%=3万円


以上です。

控除額が無い場合とある場合で、税額に「2万円」の差が出ました。

上記の通り、控除額がいくらなのかによって所得税額は大きく変わります!

ポイント

税金をお得に節約したければ「控除」を知る!

この控除額は、毎年あなたが会社に提出している各種資料によって算出されています。

そうです。最初に申し上げた、何となく毎年記入して会社に提出している紙です。

この資料から、会社側で控除額を算出します。したがって、この用紙をしっかりと理解して正確な内容を記入することが税金をお得にするための第1歩です!

年末調整|会社に提出する用紙はもれなく記入が原則

税金をお得にしたいと思うあなたがやるべきことは、会社へ提出している用紙にしっかりと事実を記入することです。

例えば、生命保険の「控除証明書」が何枚もある場合に、たくさんあるからどれかひとつだけ出しとけばいいか、ではなく、すべての控除証明書を提出しましょう。

生命保険の控除は、現在「一般」「医療」「個人年金」と3種類に分かれていて、それぞれで控除額を計算しています。加入している保険会社によっては、証明書が別々になっている事もあります。

そんなときに、提出していない控除証明書の中に、実は控除に使える内容が記載されていた、なんていう事もありえます。

せっかく控除を受けられたのに、記入・提出が面倒で提出しなかったばっかりに、本来の控除額よりも少ない控除額で所得税の計算が行われて、結果的に税金が本来の正当な所得税額よりも多く計算されてしまう事も考えられます。

ですから、まずは会社へ提出するこの用紙にしっかりと記入することを心がけましょう。それが税金をお得にすることへの近道です。

ダメ!絶対

所得税額をお得にしたいからといって、虚偽の内容を記入することは絶対にダメです。

生命保険料控除を受けるためには、保険会社から発行された「控除証明書」が必須です。控除証明書が無ければ控除は認められません。もし証明書を紛失したなら大至急再発行手続きを取りましょう。

また、年末調整で作成する書類には、あなたの配偶者や家族の有無などを記入する書類があり、所轄の税務署とあなたが住む町の役所へ提出しています。

したがって、例えば「配偶者控除」を受けたいがために、未婚なのに既婚だと虚偽の申告をした場合、仮に会社に気づかれなかったとしても、提出先の役所では戸籍を確認しますから、そこで確実にバレます。

配偶者控除とは、共働きであっても、配偶者の収入が一定額より少なければ、あなたの受けられる控除額が多くなるというものです。

控除額が多くなれば所得税額は少なく済みますから、それを利用して、配偶者の収入を故意に少なく記入して配偶者控除を受けたとしても、配偶者が働いている会社でも、あなたの会社と同様に年末調整の書類を役所に提出していますから、お互いの収入額が提出先の役所では明らかになっているので、見比べられて金額の違いはすぐにバレてしまいます。ごまかしようがないのです。

とにかく記入内容については正確に。

年末調整|お金がもらえる制度なの? → 違います

一般的な年末調整では、たいていの場合「年末調整還付金」が発生します。還付金とはお金が戻ることを意味していますので、一見すると会社からお金をもらえる制度のように感じられます。

しかし、実際にはお金がもらえる制度ではなく、あくまでも、あなたの給料から差し引かれていた所得税の過不足額を精算する制度です。

管理人である私イサムは、かつて会計事務所の職員として働いていました。

その時に、毎年十数社のクライアント企業の年末調整のチェックをして誤りを指導したり、ある時は企業に代わって年末調整の書類を代行作成したりしていたわけですが、実はそんな私も、さらにもっと昔、社会人になりたての頃、年末調整の還付金を「お金をもらえる」ことだと思っていました(笑)

同僚と、年末になにやらお金がもらえるらしいと盛り上がっていたことを昨日のことのように思い出します。

思い出すだけで恥ずかしい、今となっては黒歴史です。

年末調整|まとめ

いかがでしたでしょうか。

細かい控除の説明は複雑なので、ここでは割愛させていただき、ざっくりとした大枠をご説明しました。

年末調整の概要を知って、あなたの今後の所得税節約に役立てていただければと思います。