収入と所得|違いを深掘りします

税務

今回は「収入」(しゅうにゅう)と「所得」(しょとく)、このふたつの違いについてご紹介します。

どちらも同じような種類の言葉にとらえがちですが、その本質は異なります。

タロウ君
タロウ君

「収入」増えたから税金で持ってかれるな~

ハナコさん
ハナコさん

ちょっと待って!「所得」は増えたの?

タロウ君は「収入」と「所得」の本質を理解できていないため、単純に「収入」が増えたために「税金」が増えると考えています。

大まかには間違いではありませんが、本質を鋭くついているのはハナコさんです。ハナコさんはその違いを本質的にしっかり理解できています。

ここでは、ハナコさんがなぜ「所得」に言及したのかを深掘りしていきます。

収入と所得|収入とは

まずは「収入」から。

収入とは、簡単に言うとあなたの「年収」です。

  • 会社から給料をもらっている会社員の場合は、毎月の給料の「総支給額」を1年分合計したものが「収入」です。
  • 個人事業主やフリーランスの場合は、その事業で稼いだ1年間の「総売上高」が「収入」です。

収入と所得|所得とは

「収入」は総支給額の合計、売上額の合計という事がわかりました。

一方で

「所得」とは「収入」から「必要経費」的なものを差し引いた残りの部分のことを意味します。

会社員の場合の所得

「給料の総支給額(収入)」-「給与所得控除(必要経費的なもの)」=「所得」

個人事業主、フリーランスの場合の所得

「年間総売上高(収入)」-「必要経費」=「所得」

この計算式が大原則です。

収入と所得|所得税の計算

「所得税」とは、読んで字のごとく、「所得」に対してかかる税金です。

「収入」に対してかかるわけではなく、課税の対象となるのは「所得」です。

つまり税金は、上記の計算式によって算出した「所得」金額に一定の税率を掛けて算出します。

収入と所得|収入が増えると税金も増える?

冒頭のハナコさんが「所得」に言及した理由。もうお分かりですね。

フリーランスや個人事業主の場合、どんなに「収入」が増えても、それと同じくらいの「必要経費」がかかっていれば「所得」は低くなります。

したがって結果的に「所得税」も少なくなります。

フリーランスのタロウ君は「収入」が増えたから税金が増えると単純に考えていましたが、ハナコさんは税金が多くなるのか、少なく済むのかは「収入」ではなく「所得」で決まる事、「所得」が増えたかどうかが「税金」に直結する事をきちんと理解していたため「所得」に言及したのです。

所得税の税率

参考までに現在の所得税率はこちらです。

平成27年分以降

課税される所得金額 税 率  控除額
195万円以下    5%       0円
195万円を超え 330万円以下   10%    97,500円
330万円を超え 695万円以下   20%   427,500円
695万円を超え 900万円以下   23%   636,000円
900万円を超え 1,800万円以下   33%  1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下   40%  2,796,000円
4,000万円超   45%  4,796,000円

引用元:国税庁ホームページ 所得税の税率

個人事業主で1年間の収入が1000万円 必要経費が700万円 の場合

収入 1000円 - 必要経費 700万円 = 所得 300万円

300万円 × 10% - 97,500円 = 所得税額 202,500円


個人事業主で1年間の収入が1200万円 必要経費1000万円 の場合

収入 1200円 - 必要経費 1000万円 = 所得 200万円

200万円 × 10% - 97,500円 = 所得税額 102,500円

以上のとおり、収入が増えても、必要経費の金額によっては最終的に納める所得税が少なくなるパターンもあるのです。

したがって、収入が増えたからといって必ずしも税金が増えるとは限らないのです。

※税率の表をみるとわかりますが、所得金額が多くなればなるほど「所得税率」もどんどん高くなっています。これを「累進課税方式」(るいしんかぜいほうしき)と言います。

収入と所得|所得は10種類あります

ここからは参考までに「所得」の種類をご紹介します。

所得には全部で10種類あります。代表的なものは次の通りです。

事業所得

個人で事業を行っている、いわゆる「個人事業主」や「フリーランス」の場合は、この「事業所得」に該当します。

計算式 「事業収入」-「必要経費」=「事業所得」

給与所得

会社に勤めていて給料をもらっているあなたの場合は「給与所得」に該当します。

給与所得の算出には「給与所得控除」(きゅうよしょとくこうじょ)と呼ばれる、会社員にとっての「必要経費」的な金額を使ってその金額を収入から差し引いて算出します。

計算式 「給与総支給額」-「給与所得控除(必要経費的なもの)」=「給与所得」

不動産所得

不動産賃貸収入が該当します。

計算式 「賃貸収入」-「必要経費」=「不動産所得」

雑所得

雑所得は主に「公的年金」と「公的年金以外」に分類されます。

計算式

「公的年金」の場合 ➡ 「年金収入金額」-「公的年金控除額」=「公的年金の雑所得」

「公的年金以外」の場合 ➡ 「総収入」-「必要経費」=「その他の雑所得」

となります。

「公的年金」とは ~ 国民年金や厚生年金から受け取る年金です。

「公的年金以外」の雑所得とは ~ ネットオークションなどのネット関連の収入や、原稿料などが該当します。

その他の所得

以上4点が代表的でよく使われる所得ですが、これら以外には次のような所得があります。

  • 利子所得(りししょとく)
  • 配当所得(はいとうしょとく)
  • 退職所得(たいしょくしょとく)
  • 山林所得(さんりんしょとく)
  • 譲渡所得(じょうとしょとく)
  • 一時所得(いちじしょとく)

この6個を合わせて合計「10種類」となります。