雑損控除|生活財産の盗難や災害にあったとき

税務

雑損控除は、現金や家、家財などの生活に必要な「動産」が、災害・盗難・横領などの被害にあったとき、損失があった人が、一定の要件に該当した場合に受けられる控除です。

今回は、この「雑損控除(ざっそんこうじょ)」についてご紹介します。

雑損控除|基本的な要件と原則

冒頭でもご説明しましたが、雑損控除とはいわゆるあなたの「家財」が災害などの被害にあって損失が発生した場合(一定の要件に該当した場合)に受けられる控除です。

分類的には「所得控除」に所属しますが、生命保険料控除など年末調整で受けることができる所得控除などとはちがって、雑損控除は年末調整では受けることができません。

雑損控除を受けようとする場合「確定申告」が必要ですのでご注意ください。

雑損控除の対象となる家財は、あなたの日常生活で必要な住宅・家財などのいわゆる「生活財産」の損害に限って適用されます。

したがって、例えば高価な貴金属類や骨とう品などの「ぜいたく品」に分類されるものは「生活財産」とはみなされず、適用の範囲外となります。

同様に、住宅についても、普段生活している自宅以外に所有する別荘や、事業用の資産についても「生活財産」の範囲外として除外されます。

雑損控除|受けられる要件と対象となる損害の原因

では、実際どのような場合に雑損控除の対象となるのか、雑損控除を受けるための要件と、雑損控除を受けられる損害の原因について以下にまとめてみましたので、ご覧ください。

雑損控除災害・盗難・横領によって自己の資産(生活財産)に損害を受けた時に受けられる控除
要件損害を受けた資産が次のすべてに当てはまること
(1)資産の所有者が次のいずれか
   ⓐ 納税者
   ⓑ 納税者と生計を一とする配偶者やその他親族でその年の総所得金額が48万円以下の者
(2)棚卸資産もしくは事業用固定資産等又は「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であること
損害の原因損害の原因は次のいずれかに限られます。
(1)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3)害虫などの生物による異常な災害
(4)盗難
(5)横領
※詐欺、恐喝は対象外

雑損控除の対象となる金額の計算式

雑損控除として所得から差し引く金額は、次の計算でどちらか金額の多いほうが適用されます。

  1. (差引損失額)-(総所得金額)× 10%
  2. (差引損失額のうち災害関連支出の金額)- 5万円

※「差引損失額」~ 次のブロックで解説します

※「災害関連支出」~ 災害により滅失(めっしつ)した住宅、家財などを取壊し、又は除去するために支出した金額等

なお、損失の金額が大きい場合(その年の総所得金額以上の損失額が算定され、所得から全額を控除しきれない場合)には、翌年以後3年間を限度として、損失分を繰り越すことができ、各年の所得から控除することができます。

雑損控除|「差引損失額」とは

「差引損失額」の計算式は次の通りです。


差引損失額 = 損害金額 + 災害関連のやむを得ない支出 - 損害を補てんする保険金等


・損害金額 ~ 損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基に計算した損額の金額。H26年分から、損害を受けた資産が減価償却資産である場合には、その資産の取得価額から減価償却累計額相当額を控除した金額を基礎として損害金額を計算することができます。

・災害関連のやむを得ない支出 ~ 前ブロックで解説した「災害関連支出」+ 盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のために支出した金額

・損害を補てんする保険金等 ~ 災害などに関連して受け取った損害保険金や損害賠償金等の合計額

雑損控除|手続きのしかた

先にも説明しましたが、雑損控除は、毎年年末に会社で計算している「年末調整」では計算できません。災害を受けた本人が「確定申告」を行うことによって受けられる控除です。

確定申告書に、雑損控除に関する事項(損害の原因、損害年月日、損害を受けた資産の種類等、損害金額、損害を補てんする金額 等)を記載し、災害関連支出に係る証拠書類としての資料を添付して所轄税務署に提出します。

要件が色々複雑で、ご自身で税務署等に確認しながら作成するのは、かなりハードルが高くなってしまうかもしれません。そんなときは、お近くの税理士さんに委託してやってもらうのが一番手っ取り早いですし、安心で間違いありません。

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参照:国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)